書評 "レイアウト、基本の「き」"

表紙が凄くシンプルで、白地に著者名とタイトル名しか書いてない。「ああ、レイアウトの本なんだなー」と、素人目には思ってしまいます。 シンプルに、「レイアウトの本である」ということを主張しているわけですね。なるほど、これが「レイアウト」か。 私がレイアウトしたらいろいろと情報を詰め込んでしまうことでしょう。 文章も、少し大きめのゴシックフォントで書いてあって、読みやすい。その分、内容の凝縮感は感じられず、IT系の技術書を主に読んでいる私には、ちょっと見慣れない感じの本です。 本書は特にWebページ作成に特化したものではなく、フライヤーとか、雑誌の記事のレイアウトとか、デザイン全般について書かれています。そのあたりはWebページ作成にも応用できるでしょう。

意識して、見る。

デザインやレイアウトは時代に合わせながら生きているものなので、標本のような「素晴らしいお手本」をぼんやりと眺めているだけでは、次に繋がりません。どうしても「意識して見る」ことが必要になります。それがすべてのスタートなのです。 ・・・中略 「意識して見る」ようにしなければ「その瞬間」は絶対にやって来ません。
ページの真ん中に黒い丸があるレイアウトを見せ、次頁に同じように真ん中に黒い丸があるレイアウトを見せるのを例としている部分ですが、「黒丸は真ん中にある」と感じるレイアウト、実は、黒丸は少し真ん中より上にあるんです。
「真ん中に見せたい」とき、トレーニングを積んだデザイナーなら、少しだけ上に置きます。 「レイアウトがうまい」ということの大半は、こうしたことを自然とさっとできるようになっていることを言うのだと考えて、まず間違いありません。
こういう細かいルールの組み合わせで、「見られる」デザインが出来上がるんでしょうね。きっと。  

人の目の流れを意識する。

横組の場合は左上から右下へ、縦組みの場合は右上から左下へ、縦横混在の場合は、どちらかを基準としたルール作りをする、この3つが大原則になります。
まず、どこから見たらいいかわからないレイアウトを例に上げ、その後で目の流れを意識したレイアウトが例に挙げられています。 最近は奇をてらって、何処から見たらいいかわからないレイアウトを目にする機会もありますが、基本は、上記の通りです。 結局のところ、我々が見て「特に何も感じず普通に読めるレイアウト」が、優れているのかどうかわかりませんが、「読みやすいレイアウト」ということですね。つまり、「レイアウト」を意識することなく読めること。それが基本だそうです。あえて、そうしている。 小説の文章もしかり。フォントの大きさ、行間など、「読む」事以外に何も感じさせない「ように」レイアウトが組んであるんだそうです。なるほど。 ともすれば奇をてらったデザインをしがちな初学者にとっては本書冒頭にこのことが書かれているのは、デザインの大原則として大変有意義なことですね。  

ダメな例と良い例でわかりやすい。

本書ではダメな例と良い例が併記してあります。ダメな例は「そりゃダメだろ」と感じるものですが、良い例は、「普通すぎて特徴がない」という感じを受けました。あえて、「そうしている」んですね。 文章を読ませるのが目的なのに、変なフォントや行間で読みづらくなったら本末転倒、ということでしょう。 その他、フライヤーのレイアウトについてや、同じフライヤーの別デザインで受ける印象がどれだけ変わるか、等、書かれています。 そのフライヤーがなにを優先的に訴求しているのか、マグカップを例に取った場合、値段を優先しているのか、カップのデザインを優先しているのか、それによってレイアウトが変わってきます。 その他、書体や行間についても詳細に解説されています。自分のサイトでどんな書体を使うか、行間はどうしたらいいのか、リファレンス的な使い方ができるでしょう。

写真の使い方

また、写真の使い方も解説されています。専門家2人の対話記事を例にとって、どのように二人の写真を配置したらよいか。お互い向き合う形で写真を配置したほうが、「対話している」というイメージを読み手に想起させやすい、等々。  

その他

店舗の宣伝用フライヤーとかで、わかりにくい地図があったりしますよね。「分かりやすい地図」を書く方法なども紹介されています。 表の見やすい表現方法、グラフの使い分け、そして「色」について。私はこの「色」が苦手なんですよね。 それこそ色なんて何万色もあるので、その中で効果的な色使いをいかにしたらいいのか、そのあたりも赤ベース、青ベース等、数パターンで解説されています。  

まとめ

素人目でも、デザインの「基本」がまとめられている良い本だと思います。それほど専門的な文章で書いてあるわけではないですし、何かをデザインしたい、という人が最初に手に取る本としては良書だと思います。 まずこの本で基本を勉強して、いままで何気なく見ていたポスターやフライヤーについて、自分なりのデザインを考察してみると、デザインの良い勉強になるのではないでしょうか。   ]]>